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[Designer]

All The Way To Paris × Wool carpet / HOTTA CARPET:Story1
コペンハーゲンから届いた新たなインスピレーション

互いのクリエイティビティや技術を知ること。対話を重ねること。そしてそこから、新しいものを生み出すこと。これまでTOKYO CRAFT ROOMから生まれたプロダクトの背景にある、さまざまなプロセスを綴る本ストーリー。そしてまた、新たに次のプロジェクトがスタートしている。

4回目となるプロジェクトのデザイナーに迎えたのは、All the Way to Paris (オール ザ ウェイ トゥ パリス, 以降ATWTP)。デンマーク・コペンハーゲンを拠点に、タニア・ヴィーべとペトラ・オルソン・ゲントの女性2人によって設立されたグラフィックデザインスタジオだ。グラフィックをベースに、ビジュアルアイデンティティの制作や、展示会やイベントのグラフィック、書籍のエディトリアルデザインなど幅広く手がけている。美しいグラフィックの中に絶妙なバランスで落とし込まれた独特のカラーパレットや、ウィットに富んだドローイングなどが印象的な彼女たちの仕事の数々。そんな完璧さの中に潜むちょっとした余白や遊びごころが彼女たちの魅力だろう。グラフィックデザインという平面の世界の中にも、どこか手仕事を感じさせるような奥行きがあり、アートピースのような存在感がある。そんな彼女たちに今回依頼するのが”カーペット”のデザイン。グラフィックデザインが活かせる平面的なプロダクトのようだが、その領域を超えた新しいカーペットへの発想がATWTPから生まれることに私たちは期待を寄せる。

「私たちは友人でもあり、多くの素晴らしい仕事を手がけているテル(柳原照弘 / TOKYO CRAFT ROOMJクリエイティブディレクター)のプロジェクトに参加できて光栄です。すでに参加している素晴らしいデザイナーや作り手のプロダクトとともに自分たちのデザインがTOKYO CRAFT ROOMに同居することができることが楽しみでなりません。すべてのプロジェクトが新しい挑戦。TOKYO CRAFT ROOMというコンテクストから、また新たなエネルギー、新たなインスピレーションを得ることでしょう」

そして、ATWTPがデザインする”カーペット”の開発を依頼したのが、1962年の創業以来大阪・和泉市に拠点を置くカーペットメーカー、堀田カーペットだ。素材をウール(羊毛)にこだわり、高級ホテルやブティック、官公庁施設、住宅など多様な内装に携わっており、TOKYO CRAFT ROOMのベッドルームにもすでに同社のカーペットが採用されている。また、現在国内で所有しているのは数社で稼働台数も20台程度という稀少な織機である、ウィルトン織機を使ったウィルトンカーペットのものづくりを今もなお行っており、職人の技術があってこそ表現される織物独自のテクスチャーや耐久性に優れたクオリティを追求し続けているなど、「カーペットを日本の文化にする」というビジョンを掲げる堀田カーペット。ウィルトンカーペットをはじめ、さまざまな用途、シーンに合わせて考え抜かれた自社ブランドの展開するだけでなく、カーペットの「気持ちの良い暮らし」を伝えるべく、調湿効果に優れ手入れも簡単な天然素材であるウールの魅力やカーペットのある暮らしの提案などさまざまなアプローチで発信している。

彼らが新たに開発するTOKYO CRAFT ROOMのためのカーペット。これまでも数多くの商品デザインを手がけてきたが、今回ATWTPをデザイナーに迎え、彼女たちと会話を重ねる手前の段階で、どのような仕様がふさわしいか、どのような新しいチャレンジができるのか思案を巡らせた。そして自社ブランドのひとつ”WOOLTILE(ウールタイル)”をベースにするという提案が持ちかけられた。

堀田カーペットのウールタイルとは、一言で言うと、誰もが簡単に床を作ることができるDIYカーペット。3年前に同業の会社が事業を終了するにあたり引き継いだ、「アキスタイル」という織機の特性を活かすために2019年に誕生した新ブランドで、1枚が50cm×50cmというタイルカーペットを、敷き詰める場所や用途によって色や柄を自由自在に組み合わせながら、工具等不要で簡単に空間づくりを楽しむことができる。通常タイルカーペットは長い反物作ってから型で打ち抜くため、まっすぐ切ることが難しく柄が繋がらないことが前提にあるが、このウールタイルは、50cm角のタイルカーペットを1枚ずつ作る製法で、日本で唯一精緻な柄合わせが実現できるという。ウィルトンカーペットに続き、アキスタイルで作るウールタイルは堀田カーペットの新たなチャレンジであり、そこに今回のプロジェクトが参画することになる。

「ATWTPという海外のデザイナーならではの視点と、彼らならではの感性から生まれるグラフィックを、このウールタイルに落とし込むとどんなものができるか。また新しいチャレンジになるのではないかと思ったんです。そして、デザイナーの新たな発想の力をお借りしながらも、製品は”堀田カーペット”でなくてはなりません。ウールタイルのパズルのように組み合わせられるおもしろさと、アキスタイルというこの織機による緻密なデザインを1枚ずつ再現する技術にこだわっていきたいですね」と語る、堀田カーペットの3代目代表取締役社長である堀田将矢さん。

ウールタイルだからこそ生まれるグラフィックと柄の組み合わせの妙。日本とデンマークを行き来しながら、ファッションやデザイン、インテリア、食、自然……両者を取り巻くさまざまなインスピレーションから、このプロジェクトならではのムードできっと表現されるだろう。決して一枚のカーペットにグラフィックを落とし込むだけでは生まれない、ATWTPらしいデザインディレクションと堀田カーペットの素材へのこだわり、高い技術とのコラボレーションによる。まったく新しカーペットの開発がはじまった。

>>Story2へ続く

All The Way To Paris

オール ザ ウェイ トゥ パリス

オール・ザ・ウェイ・トゥ・パリス(略称:ATWTP)– コペンハーゲンを拠点としてタニア・バイブとペトラ・オルッソン・ゲンズによって立ち上げられたグラフィックデザインスタジオ。デンマーク王立芸術アカデミーでグラフィックデザインを勉強していた二人は出会って間も無くスタジオを立ち上げ、現在では多国籍なメンバーによって構成されている。コンセプチュアルなデザイン性を得意とするATWTPは、プロジェクト規模に関わらず、ビジュアルアイデンティティ制作、イラスト、展示会などのグラフィック、美術館や博物館のカタログ制作、本、布物、インテリアなどの多岐にわたるデザインを行っている。

allthewaytoparis.com/

HOTTA CARPET

堀田カーペット

堀田カーペット - ウールのウィルトンカーペットを専門に製造するカーペットメーカー。1962年に大阪府泉市にて創業以来、「一番気持ちが良い床」をコンセプトに住宅・ホテル等のカーペットから、家庭用ラグ、DIYカーペットを展開。最も古い製法の一つであるウィルトン織りを通して、日本にもう一度カーペットの文化をつくることをビジョンとしている。キメが細かく質の高いカーペットが評価され、高級ホテルやラグジュアリーブランド、官公庁施設などの内装に関わってきた。

hdc.co.jp/

“Lines” Wool Carpet

Size:
50cm×50cm, Total Hight 15mm,Pile Hight 10mm

Material:
Base WOOL100%
Line (Semi freez WOOL80% NYLON20%)

Price:
¥5,500(in tax)