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[Designer]

Claesson Koivisto Rune × Woodwork / sasimonokagu takahashi:Story3
手から伝え、手で感じ取る

「木は自然から生まれたもの。木を使って作るものは生きていないといけない。生きていることを表現するために今回は、僕が平面が存在しない人体のような柔らかい形を手で描くから、それを君の手から生み出してほしい」

それが、今回の家具作りにおけるCKRから高橋へのメッセージだった。そしてその想いからこの家具は“Hand”と名付けられた。栗の木でできたテーブル、ベンチ、スツールのセット。その滑らかな曲線を描くフォルムや、接合(ほぞ継ぎ)のディテールに私たちは好奇心を掻き立てられ、自然と会話が弾むだろう。

初めてテーブルを囲んで座った時の印象について、CKRの3人が語る。

「北欧と日本、両方の良さを感じます。北欧の文化を背景に持つ私たちがデザインしたものだけれど、そのフォルムには日本らしさがある。チャーミングであり、柔らかく親しみやすい印象でありながら、狂いのない正確さを持ち合わせているのです」とクラーソン。「触り心地の良さも素晴らしいポイント」とテーブルを撫でながらコイヴィストは言い、「なんて魅力的な触り心地の家具なんだろう。このテーブルから離れたくない。ずっと触っていたいし、もっとこの家具のディテールを探求したくなります」とルーネも同調した。

「“Hand”の表面を指先で触れてみると、それは完璧なフラットではなくわずかに凹凸のある質感に気づくでしょう。それが手仕事の証であり、その不完全さこそが私たちが求めた完璧さなのです。一見気づかないようなディテールですが、しっかりとその存在を感じることができます」とクラーソンは語った。

このような彼らの言葉にもあるように、家具の表面をカンナで仕上げたことは、“Hand”のデザインにおいて重要なポイントだ。広島の高橋のアトリエを訪ねた時、ルーネはカンナという道具そのものや、高橋のカンナの使い方に惹かれた。高橋は、カンナのみで仕上げることによって生まれる微かな質感を家具の中でもよく手で触れられるような場所、例えば肘掛や座面の縁などに敢えて残すようにしているという。そのプロセスによって、私たちは木に触れ、木が生きていることを感じる。カンナはまるで、高橋の体の一部のような存在であり、彼の想いを伝えるための道具のよう。そんな高橋のこだわりにルーネは感銘を受け、彼の技術とフィロソフィを伝えたいと思い、今回の家具を仕上げは全てカンナで行って欲しいと伝えたのだった。

伝統的な指物の技術を用い、ヒトと家具の関係性を大切にしている高橋の家具。いつまでも美しく、機能的であり、修復しながら永く使い続けられる家具作りを高橋は目指している。

「100年に渡り残る家具があるとしたら、それは100年間ずっと愛され続けるべきだと思っています。愛される家具を作ること。それが作り手としての使命だと私は思っています」と高橋は語る。今回のCKRとのコラボレーションは、高橋自身、作り手としてもデザイナーとしてもまた新たな一面を知ることになった。

「プロセスにおけるすべてのことが勉強になりました。自分の作る指物家具を北欧的に解釈するとこうなるんだ、ということがまずおもしろかったですね。この円形のテーブルトップのデザインに、これまでの自分の概念を打ち崩されたこともそう。CKRが表面の仕上げや形状など、私の造形へのポリシーを理解した上で、自身を表現してくれたと思っています。表面に磨きをかけず不完全さを残すことが個性となるということを再認識できましたし、これまでそうやってきた自分を信じていいんだ、ということも強く感じました」

CKRは30年に渡り日本のさまざまなプロジェクトに関わってきたが、今回のコラボレーションはまた新たに特別なものとなった。互いに密に対話を重ね、CKRのデザインが高橋の可能性を広げたことによって、日本のものづくりへの理解が深まった。クラーソンは最後にこう語った。「違う文化背景が持つ同士でのものづくりは難しいということをよく耳にしますが、今私たちがそれを実現できたことに誇りを感じています。デザイナーとして、それが今回のプロジェクトでの一番のご褒美ですね」

>>Story1、2を読む

Claesson Koivisto Rune

クラーソン・コイヴィスト・ルーネ

クラーソン・コイヴィスト・ルーネは1995年に、モーテン・クラーソン、エーロ・コイヴィスト、ウーラ・ルーネの3人によって設立されたスウェーデン・ストックホルムを拠点とするデザインスタジオ。

www.claessonkoivistorune.se

sasimonokagu takahashi

さしものかぐたかはし

指物師 高橋 雄二が、2010年より広島県の熊野町にてスタートした家具工房。 木の家具や小物のデザインから制作、販売までを一貫して行っており、現在は、スタッフと共に作るオリジナル製品や高橋個人が受注するオーダー家具を中心に制作を行っている。家具作りのほか、敷地内のイベントスペース tetoma では、暮らしにまつわる展示、お話会など各種イベントを行っている。

www.sasimonokagu-takahashi.com

“Hand” Table, bench and stool

Size:
W2400 D1050 H730mm

Material:
栗(広島産) / Chestnut in Hiroshima

Price:
Table ¥640,000
Bench ¥216,000
Stool ¥160,000(+tax / estimated price)