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[Designer]

De Intuïtiefabriek × Woodwork / SOMA :Story3
互いに関係し合う、“Ranma”キャビネット

TOKYO CRAFT ROOMにとって初めてのプロダクト、De IntuïtiefabriekとSOMAによるキャビネットが完成した。美しい杉と光を透過する薄い和紙ので組み合わせたそれは、一見実にミニマルでありながら、中に入れたものが見えるようで見えない、どこか曖昧な雰囲気も併せもったデザイン。パプリックとプライベート、オープンとクローズド、というような相反する物事へのアイデア出しを楽しみながら、キャビネットの構成のための対話を重ねていった。

そこに新たな発見があり、使う人とものの双方に影響を与えるようなデザインが他にはない独自の価値となる、とエフィエヌは説明する。「私たちはこのキャビネットをただのオブジェだとは考えていません。時にはものをしまう収納であり、時にはものを見せるショーケースであり、さらには何が入っているか発見させる行為を誘うものでもあるのです。私たちにとって、扉や引き出しを開けたり閉めたりするということは、どこか密められた魅力がある行為なのです」

De Intuïtiefabriekは、デザインを通して「発見させる」という感覚を追求することで、機能的ではありながらもさまざまな解釈が生まれる、ある種の不確かさを併せ持つキャビネットを完成させた。

「いつもなら、作るものに対して不確かなものはなく、何らかの定義づけをしますが」とエヴァ。「しかしキャビネットスペースについては、意図的に定義しました。これは従来のキャビネットのように壁付けに置くものではありません。壁から離して置くことで、その周りとの関係性がもっと生まれるのです」とエフィエヌは言う。

彼女たちこのアイデアは、このキャビネットに付けられた「Ranma」という名前にも反映されている。「Ranma」とは日本建築様式のひとつである「欄間」が由来となっている。二つの空間の光や空気を通す役割を果たす欄間。このキャビネットも同様に、デザインや空間をとりまくさまざまな関係をつなぐプロダクトだ。 また、オ”ラン”ダの”Ran”、スペース=“間”の”ma”という言葉の響きの組み合わせにも、今回の協業への縁を感じてならないと二人は言う。

SOMAが大切にする3つのテーマ、「山、川、そしてクラフト」。これらの要素がすべて表現されたこのキャビネットについて川合は、「自分一人でデザインして、作るというやり方は、自分の技術のみでしかデザインできないということになります。今回De Intuïtiefabriekのデザインのもと制作した初めてのチャレンジで、お互いの考えから新たなものが生まれました」と語る。

プロダクトそのものだけではなく、デザイナーや作り手としての役割やポテンシャルへの見解が新たに向き合う機会となった今回の制作。De Intuïtiefabriekが「可能性の端」と語った、扉のデザインディテール。「これはある意味とても危険なチャレンジ。和紙は本当に繊細で壊れやすいものだから。でも、そのことによってその素材の価値を私たちは認識することができます。実用的ではないかもしれないけれど、意識をもってこのキャビネットを手入れするということが、素敵なことだと思うのです」